On-Line講座1回目 -自己紹介の極意- 相手に応援してもらえる話をしよう

on-lineアントレ講座の第一回が開催されました。
テーマは『自己紹介』!

放送作家の方に講義の初回に飛び入りで参加してもらった。その人は、大学でストーリー作りの講座を何年もやっている。最近、自己紹介のアドバイスを始めていたので、学生たちにいい刺激を持ち込んでくれるのではという直感を持っていた。突然、呼んでみたところ、役に立つかわからないですが、という謙虚な反応だった。そこをやや強引に参加してもらった。私の経験則として、役に立つかどうかわからない状況は面白いことが生まれる可能性を持っている。役に立つことがわかっているということは結果が見えているということなので、やらなくてもいいではないだろうか。

余談だが、米国プロバスケットのスーパースター、マイケル・ジョーダンには、「シュートは放つ前から入るとわかっていた」という言葉ある。彼は数秒先まで未来が見えている。数秒後にボールがネットに入るイメージがありありと想像できているので、そうなるように体を動かす。そうなるように、神経に命令を伝えるということが起こるらしい。

By: Ron CogswellCC BY 2.0

なぜ、自己紹介にアドバイザーを付けようと思ったのか。

毎年、学生向けに講座をやっている。ゴールは、「ぶち破る力をつける」「そのきっかけを体験する」という講座だ。ぶち破る人の多くは、組織を飛び出して、自分で組織を作るので、起業はわかりやすい目標の1つだ。講座としては起業しなくても、大企業や役所や大学を中から改革してくれる人も歓迎している。

起業に関しての研究は米国中心のため、テーマが、マーケティングとかプレゼンテーションとか、ファイナンスとか、カタカナが多い分野に偏っている。

たとえば、マーケティングを学ぶには、まず、お客さんの話を聞きましょう。アンケートより、インタビューがいいですよ。インタビューでも相手はなかなか本当のことを言えないので、行動観察をしましょう、とか、細かい手法を伝えていた。

その前段に、集まった仲間のことを知るのは大事なので自己紹介しましょう、という構成にしている。18年間もやってきて、自己紹介はそこまでの扱いだった。手とり足とりではなかったのだ。昨年、自己紹介にも他のテーマと同じように一歩一歩進む道筋はあるのではないか思い至った。

自己紹介はよく言うプレゼンテーションに近いともいえる。プレゼンテーションについては、聞いている人が何に関心を持っているか調べよう、聞いている人の共感を得られるように話を始めよう。などと道筋を示していた。もう少し進むと、主張を1点にしぼろうとか、1点を多面的に補強しようとか、写真や動画を使って伝わりやすくしようなど、道筋を一歩一歩進めていた。

自己紹介についてはそういう一歩一歩をやっていなかった。「来週、自己紹介をするので準備してきて」と伝えていただけだった。今回もそれだけだった。1つ変えたことが、話をする場にアドバイザーに来てもらって、気づきを共有してもらうことだった。

3人に自己紹介をしてもらったので、サンプルとして3つのアドバイスを紹介する。

1つ目は、聞いている人が、自分に関心を持ってもらえることを言おうというアドバスだった。アドバイザーから「自己紹介の目的は何ですか?」という問いかけがあった。学生からは「自分を知ってもらう」という回答が続いた。アドバイザーからは「それもあるが、せっかくの出会いなので次につながるように」「相手にとって私と仲良くなるとこんなにいいことがある」「私、あなたに、こんな楽しみを提供できますよ」ということを伝えるとよくないかという話が出た。「仲良くなりたいなと思うきっかけになることを入れるといい」というアドバスだった。

なるほどー。自己紹介も経験がある人が見ると深みが出る。

2つ目。また、別の学生の自己紹介に対して、「すこし、話が難しかった。これから起業して、応援される存在になりたいなら、なるべく例を挙げて、具体的に説明することを習慣にしていくとよいのでは」「起業するということは、全然、関連する知識がない人に説明して応援してもらうわけですから」「頭が良い人は話が抽象的になりがち。そうなると頭が良くない人はついていけなくなる」

これもなるほどー。確かにそうだ。

特に米国の記者に多いやり方で、記事の書き出しを、誰か具体的な個人の語りするという手法がある。「ボブ・ジェームスはバスを待っていた。この3か月の激動のなか、ふと、出来事を振り返る時間を持てたのはいつ以来だろうか...」みたいな。超具体的にしちゃうんですね。読み手にとっては、ボブでもトムでもいいんだが、そこまで具体的にするんですね。書き出しが個人の独白が多すぎて、飽きるというのもあるが。

By: manhhaiCC BY 2.0

3つ目も2つに近い。3番目の学生の自己紹介の中で、おじいさんにあこがれて起業したいと思うようになったとあった。アドバイザーからは、「おじいさんを見ていて起業したいと思ったエピソードがありましたか」という追加の質問が来た。「おじいさんの葬儀におじいさんを慕ってくれていた人がたくさん集まったのを見て、自分もそうなりたいと思った」という回答。続いて、アドバイザーから「おじいさんはどういう会社をやられていたのですか」。「石材店でした」と話が続いた。

アドバイザーからはまとめとして「起業したい」「応援される人になりたい」ということだったら、「なぜ起業したいと思ったかの出発点の話が共感を呼ぶと思う」「そこにものすごく強いエネルギーがあるといい」という話があった。なるほどー。

さすが放送作家!ストーリーというか人に関心を持ってもらう話の持って行き方、ネタの置き方など、そういう視点か。私の方が参考になった。

米国記者風にすると、おじいさんの名前、住んでいるところ、石材店の名前、通りの様子、葬式の様子まで具体的に書いていくということかもしれない。そんなおじいさんっていいなー。自分もそうなりたい、そのおじいさんに会ってみたかったなー、と思うところまで具体的に言わないと共感が生まれないということだ。話が長くなるのは適度に調整か。

自己紹介の場合、伝えるものは自分。自分に共感してもらうために、自分が何を感じる人なのかを具体的な挿話を通して伝えるということか。