書評:ある日突然40億円の借金を背負う

TA竹内です。二回目のブログ投稿です。2015年度の講座が終了してから早くも2ヶ月半が経ち、すっかり秋も深まってきましたね。読書の秋だからというわけでもないですが(というのも、本は一週間に一冊はなんかしら購入して机に積んでいます)、最近ブルっ・うるっときた本があるので簡単にご紹介しようと思います。

「ある日突然40億円の借金を背負うーそれでも人生はなんとかなる。」
湯澤剛(ゆざわつよし、敬略)

大手企業のサラリーマンであった著者がご尊父の急逝から年商20億円・借金40億円の中小企業の経営者になり、当時返済には80年は掛かるといわれていたところ、度重なる不条理にも屈せずに今年の5月に16年という当初よりも大幅に短い期間で借金を返済したという話です。

数ある苦難やそれに対峙する著者の葛藤がテンポよく時系列で語られているため、ものすごくさらっと読めてしまいます。ノンフィクションのドラマを見ている感じです。さらっと読めてしまうので、読んだだけでは自分の中に何も残りません。ただ、ノンフィクションなので、本当はものすごく濃密なことが語られています。

そういうわけで、私は2回読んでこれを書いています。2回読んでも、著者と同じような修羅場を経験したわけではないので、「本当にわかっているのか」と聞かれるとわかったと言い切れないもどかしさはあります。それでも私なりに自分の経験に照らし合わせたり、想像力を働かせながら読んだところ、約200ページの中で自分の琴線に触れた部分が40箇所以上ありました。

一つ一つ掘り下げたいところですが、特にはっとさせられたのは、「同じ1日・1時間でも人によって重みが全く違う」ということです。本の割と始めの方にでてきますが、著者は借金の金利支払い額を1時間あたりの金額に換算してその大きさに絶望したというくだりがあります。自分にとっては何気ない1日・1時間でも、他の人にとってはものすごく重い意味があることにハッとしました。同時に、自分の捉え方次第で1日・1時間の価値を何倍にもスケールすることができるとも思いました。

これまで日々時間を意識して生活してきたつもりですが、やはり徹底できていません。8月からやっているlife time analysis の記録によるとだいたい一日の20%くらいを「その他」に使用しています。要するに何をやっているのかよくわからない時間です。「何ために1日・1時間を過ごしているのか」という目的意識がないから、無為な時間を過ごしてしまっています(無目的な時間も必要ですが、それは「無目的」という目的があると考えています。例えば瞑想とか)。

で、思ったのが、当たり前ですが、1日・1時間無駄にせず過ごすには、まず目標や目的を持ち、自分にとっても最も大事なこと絞り込む必要があるってことです。さらに、目標を達成するためにやらなければならないことを書き出し、それをいつまでに実現するか決める必要もあります。工数と期間が決まれば、単位時間あたりにやらなければならないことが決まるからです。そうすることで、自分にとっての1日・1時間の価値が見える化します。

もちろん単位時間でやらなければならないことが過大だと、実行できず意味がなくなってしまいます。なので、実行可能なレベルに設定する必要があります。地に足つけるっちゅーことです。一旦それさえ決まればあとは粛々とやるだけで、無為に過ごしていた時間に大きな価値が生まれます。さらに異なる時間の異なる活動同士が連携しあってより大きな価値につながると思います。ゼロから1が生まれ、さらに1が10へとスケールする感じですかね。

結局自分次第ですが、本気で何かに取り組んでいる人は少なからず同じようなことをやってると思います。ので、自分なりの目標を達成するための十分条件だと思って、道筋を立ててコツコツやるしかないなぁと再確認しました。

あと、もう一つ大事だと思ったのが「足るを知り」「感謝する」ことです。人の欲の深さには底がないので、自分でここまでと決めない限り、際限なく次を求めてしまい一生満たされません。また、ある程度の欲を満たし、心に余裕がないと、自分を取り巻く環境(人や社会)に感謝できません。

感謝することの本質は、人に与えられたものに気づき、自分を振り返ることだと思っていますが、「気づいて、振り返る」ってのは成長したい人に向けたアントレ講座からのメッセージでもあります。人に感謝するってことは、すごく自然なものなので、自分が成長することを意識してやる人はあまりないと思います。ですが、感謝している時は気づきや学びを得ている時なので、何に気づいたのか少し意識してみると、よりよく振る舞うことができようになると思います。昨日より今日、今日より明日うまくやる秘訣だと思います。

湯澤さんはあとがきで読者にありがとうございますと感謝されていますが、私からすると濃密な経験を本にして出版してくれてありがとうございますと直接お伝えしたい気持ちになりました。

最後に、冒頭のブルッ・うるっときたポイントですが、今年の2月に社員さんを全員集めた集会で、永続勤務を表彰された方が感動の涙を流されているシーンや、湯澤さんがご尊父のことを回想されているシーン、他界された板前さんの親族や昔働いていた社員の方から感謝されているシーンなど、純粋に感動しました。ほんまええ話です。